明日を約束できなくて 3





悲しい顔と涙の意味が分からない。





泣かせたくねぇのに…どうしておれはナミを悲しい気持ちにさせちまうんだろう。





絡めた指が冷たくて儚くて少しだけ怖くなる。

力一杯に抱きしめてみたナミはやっぱり小さくて必死に涙を我慢してるんだ。





何て言ってやればいいんだろう。





お前が側に居て欲しい奴は本当におれなのか?



おれでいいなら…背中に手を回して欲しいんだ。

名前を呼んでくれるだけでもいい。



お前のやり方でいいからおれを選んで。





とんっと胸元を押し返そうとする、か弱い力に抵抗する事なく素直に従う。



ナミの目は真っ赤で、それでもまだ涙が溢れてた。



別に悪い事じゃない。

泣きたいならたくさん抱きしめてやる。

いつだって側にいて頭を撫でてやる。



だけどナミは違う。





「ごめっ、ん…ね」





真っ赤な目して必死に謝ってくるから泣きたくないんだろう。





正直言って、そんな顔でそんな事を言われても困る。





…抱きしめてやりたくなるから。



…おれの腕の中でだけ泣いてほしいって思うから。





きっと泣かせたのはおれなのに。

ナミにこんな顔させてんのはおれなのに。





ほっぺに触ってくれた手。

髪を撫でてくれた手。

唇をなぞってくれた手。



全部がおれのことを「好き」って言ってくれてるんだって自惚れる。



お前が側に居て欲しい奴はおれなんだって信じたいから。





教えて欲しいことがあるんだ。





「ナミ?」
「…ん?」
「あのな、おれに言う事ねぇ?」
「…別にない、けど…」
「言いたくねぇならいいけどよ」





おれから目をそらすくせに、時々うるうるした瞳でおれを見つめてくる事。



…知ってるんだ。



何かおれに言いたい事があるのかなってずっと思ってた。



今まで耳を傾けようとしなかったのは…きっと、



別れてとか別に好きな奴が居るとかって言葉。

お前の口から言われると思ってたから…聞きたくなかったんだ。



だから悲しい想いさせちまったんだろ?

おれがお前の気持ちを聞こうとしなかったから。





だけどもうやめる。



ちゃんとお前の気持ちを聞くから。



全部、全部受け止めたいって思うから話して欲しいんだ。





今の関係が壊れちまっても、航海士としてでもいいから…おれはお前とずっと肩を並べて歩いていきたいって思ってるから。





「…あんたの飽きっぽい所…嫌い」
「へ?」
「あんたに言いたいこと…言っただけ」
「んん、飽きっぽいか?おれ」
「こないだはかくれんぼ。今日は釣り。すぐ飽きてるじゃない」
「だって、かくれんぼしてもすぐ見つかるからよ」
「チョッパーを鬼にするからでしょ。匂いで気付かれるって何で分からないわけ?」
「ハッ!そうか!じゃ何で魚は釣れねぇんだ?」
「あんたの場合、エサを自分で食べてるんだから釣れる訳ないじゃない」
「分かってんなら何で教えてくれねぇんだ!おれすっげぇつまんなかったんだぞ」
「だからどうして単純な事なのに気付かないのよ!」





いつもみてぇに言い合いをする。



ナミは怒った顔してるけど…悲しそうな顔よりいいと思う。



目が合う度にバカって言ってくるから失敬だなって怒ったふりをしてみるんだ。





やっぱりおれ達はこうでなくちゃな。





「おれ、飽きっぽくねぇぞ」
「どうだか」
「ナミに飽きてねぇじゃんか」
「そろそろ飽きるんじゃないの」
「ししっ!心配か?」
「べ、別に」
「飽きねぇから心配しなくていいぞ」
「根拠がないじゃない」
「お前ばかだなー、飽きるやつ仲間にする訳ねぇだろー」
「カラッポ頭のアンタにだけは言われたくないわよ」
「ナミは?」
「何よ」
「ナミはおれに飽きねぇのか?」
「…飽きる奴なら最初から仲間になってないわ」
「お前おれのマネしただろー!ナミもカラッポだなー」
「何ですって」





いいこと教えてやる。



泣いた後はいっぱい笑えばいいんだ。



そしたら泣いた事なんか忘れちまうからな。きっと。

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ナミさんが口を割らない事には始まらないのです。